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- 2月の米CPI、関税の影響を語るにはあまりに不十分
2月の米CPIは市場予想を下回り物価再加速懸念は後退した。しかし、米国債市場の反応は限定的だった。2月の鈍化は1月の急上昇の反動の可能性があり、2月のCPIだけでは利下げ期待を高めるには不十分と市場は判断したようだ。また、トランプ政権による関税政策の影響は2月のCPIに反映されていないようだ。今後の関税引き上げの道筋は不確実で、経済への影響を予測するのは難しい状況だ。
2月の米CPIの伸びは全般に1月を下回り、物価再加速懸念に一服感
米労働省が3月12日に発表した2月の消費者物価指数(総合CPI)は前年同月比で2.8%上昇と、市場予想の2.9%上昇、前月の3.0%上昇を下回った(図表1参照)。短期的な動向を示す前月比も0.2%上昇と、市場予想の0.3%上昇、前月の0.5%上昇を下回った。
エネルギーと食品を除いたコアCPIは前年同月比で3.1%上昇し、市場予想の3.2%上昇、前月の3.3%上昇を下回った。前月比も0.2%上昇と、市場予想の0.3%上昇、前月の0.4%上昇を下回った。1月の米CPIでは物価の再加速が懸念されたが、2月は前月を下回り、再加速懸念は一服したが米国債市場では利回りが小幅ながら上昇した。
2月のCPIを項目別にみると、1月に比べ全般に鈍化した
12日の米国債市場では、CPI発表直後の条件反射的な利回り低下を除けば、小幅な利回り上昇にとどまった。反応が小さかった理由として、国債入札を控えていたというテクニカルな要因以外に、①1月のCPI上昇が一過性であった可能性、②さらなる利下げ期待が高まりにくいこと、③関税の影響は2月のCPIではほぼ確認されず、これからの動きに注目していること、の3点が考えられる。
①では、2月のCPIは前年比、前月比ともに1月を下回った。そこで総合CPIの前月比の伸びを過去2年について振り返ると、25年1月は突出して高いように見える(図表2参照)。前月比の伸びを、エネルギー、食品、財、及びサービスの4項目に分類し項目別に寄与度をみると、2月は1月に比べ全般に伸び悩んだ。サービスの内訳をみるとウェイトが大きい住居費は前月比0.2%上昇と、1月の0.4%上昇を下回った。ただし、賃料や持ち家を賃料換算する帰属家賃は過去数ヵ月と同じ伸びで安定していた。その中で押し下げ要因はホテル宿泊代が0.2%上昇と、先月の1.4%上昇から大幅に鈍化したためだ。ただし、ホテル宿泊代は月ごとの変動が大きく、物価の基調を見るうえでは平均する必要がある。サービスに含まれる航空運賃も4.0%下落と、1月の1.2%上昇から押し下げ要因に転じた。他にも、自動車保険、駐車場料金などが1月は押し上げ、2月が押し下げとなっている。
食品では鳥インフルエンザの影響で1月は卵価格が高騰した。卵価格は高騰が続いているが、食品価格は2月が0.2%上昇と、1月の0.4%上昇から鈍化し、落ち着きが見られた。
注目したい項目である財は前月比0.2%上昇と、1月の0.3%上昇を下回った。衣服や家具など1月を上回った品目もあったが、娯楽用品などが下落幅を拡大させた。新車は0.1%上昇と伸び悩み、中古車は前月の大幅な伸びから鈍化した。なお、中古車の市場価格は比較的落ち着いており、今後の展開を注目している(図表3参照)。
2月CPIは1月の急上昇要因が消失しただけ、緩やかな鈍化に変化なかろう
1月と2月の品目を比較すると、1月に上昇した品目は多かったが、平均してみれば物価の緩やかな鈍化傾向が続いていることに変化はなかったと判断してよさそうだ。
この前提で、次に②の利下げ期待を考えよう。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は3月7日の講演で「利下げを急がない」としつつ、利下げの条件として想定以上の労働市場の悪化または物価の鈍化の2点を挙げた。2月のCPIのような鈍化が3月以降も続くなら、想定以上の鈍化に該当するのかもしれない。しかし、2月の数字だけでは単に1月の急上昇の反動の可能性も捨てきれず、利下げ期待が高まらなかったのだろう。
市場は最近の株式市場の下落などを受け、すでに年内ある程度の利下げは織り込み済みで、利下げの期待をさらに積極化させるには2月の数字だけでは不十分と市場は見たのだろう。
③の関税の影響は2月のCPIでは確認できなかった。トランプ政権は2月4日に中国からのすべての輸入品に対して10%の追加関税を発動した。物価などへの影響が気になるところだが、逆に言うと2月の発動は限定的で、CPIへの影響も限られたようだ。関税引き上げの影響は特に財項目に影響するとみられるが、2月の財は前月を下回っている。関税が本格化するのはこれからで、3月4日にはカナダとメキシコからの輸入品に25%の一律関税を発動した(カナダからのエネルギー輸入は10%)。4月には相互関税も予定されている。
関税は基本的にインフレ要因と見られる。一方で、価格転嫁が進められないといった場合には景気の押し下げ要因とも見られる。トランプ政権の関税政策の全容がわからない中、経済への影響も読みにくい。不確実性が高いことだけがわかっているのが現在の状況だ。2月のCPIだけでは、米国債市場の方向感は出しにくかったのかもしれない。
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