- Article Title
- FRBは何を見ているのか?
3月18、19日のFOMCでFRBは政策金利を据え置いた。キーワードとなったのは「不確実性」だ。年4回示されるFOMC参加メンバー19名による経済見通しでは、2025年の経済成長率が昨年12月に比べ下方修正される一方、個人消費支出物価の上昇率は上方修正された。背景にあるのはドナルド・トランプ大統領の関税政策だろう。同大統領は、3月26日、輸入自動車に対して25%の追加関税導入を発表した。また、4月2日には相互関税の詳細が発表される予定だ。これらの関税を負担するのは、米国の消費者である可能性が強い。連邦議会での議論を経ず、ホワイトハウスに関係する少数で重要な政策が決まる状況は、金融政策にとっても明らかな不確実性だ。トランプ大統領は、FRBに利下げを求めている。ただし、大統領が直接的に金融政策へ容喙するハードルは高い。同様に独立性の担保された連邦取引委員会(FTC)に対する司法判断も注目される。政治的圧力のなかで、当面、FRBは景気・物価の方向性を見極めることに注力するのではないか。
■ 関税への不透明感から物価上昇率は上方修正、成長率は下方修正
3月のFOMCに伴い発表された経済見通しでは、2025年の実質経済成長率が昨年12月に比べ0.4%ポイント下方修正され1.7%とされた。一方、コア個人消費支出物価の上昇率は、2.5%から2.7%へ上昇修正されている。景気の減速とインフレ圧力の高まりが想定された背景は、トランプ大統領による経済政策だろう。パウエル議長は、FOMC後の会見において不確実性への懸念を繰り返した。
■ 予想水準の中央値には変化なし
今回の経済見通しにおいて、2025、26、27年末のFFレートの水準に関し、参加メンバー19名の予測の中央値に昨年12月時点からの変更はなかった。2025年末のFFレートは3.875%と見込まれており、これは年内に2回の利下げが行われることを示唆している。ただし、今回のFOMCで利下げが行われなかったのは、トランプ政権による関税政策が経済・物価に及ぼす影響を見極める意図ではないか。
■ ドットチャートは上方シフト
FOMCメンバー個々がどのような物価上昇率を見込んでいるか示すドットチャーを作成し、昨年12月、今年3月の変化を見ると、中央値こそ3.75~4.00%で変化はないものの、3ヶ月間で全体に上方シフトした印象になっている。インフレ圧力が高まる可能性、景気減速のリスク、それらの両面への目配りが必要になったことから、FOMC参加者は追加の利下げに関してやや慎重なスタンスになったと言えるだろう。
■ 急速・大幅な利下げは危機の場合
2000年代に入って以降、利下げ局面はITバブル崩壊期、リーマンショック期、新型コロナ禍期の3回あった。これらは結果として非常に似た経緯をたどっている。まず金融緩和の結果として何等かのバブルが発生、その鎮静化を図るための引き締めにより当該バブルが崩壊、景気失速へ至るパターンだ。従って、急速、且つ大幅な利下げが行われた。今回はこれまでとは大きく様相が異なる。
■ 投票権はFRB理事7名と地区連銀総裁5名
金融政策への大統領の介入が難しい理由はFOMCの構成にある。投票権者12名のうち、5名は地区連銀総裁であり、大統領にはその人事権がない。また、議長、副議長を含め7名のFRB理事は、連邦準備制度法により解任には「正当な理由」が必要だ。ただし、トランプ大統領は同じく独立性が担保されたFTCの2委員を解任した。それへの連邦裁判所の判断は、金融政策にも影響を及ぼすだろう。
■ FRBは何を見ているのか?:まとめ
トランプ政権による関税政策には、1)相互関税などまだ全貌が明らかでない、2)相手国・地域による報復関税の可能性、3)実際の経済へのインパクト・・・3つの点で不透明感が残る。FRBとしては、当面、そうした政策的動きが雇用、物価にどのような影響を及ぼすのか、見極めることになるのではないか。その間、政策金利は大きく動かない可能性が強い。ただし、米国の失業率は歴史的な低水準にあり、仮に内外の企業が関税回避のため米国国内で生産拠点の増強を図る場合、建設コスト、オペレーションコストは共に大きな負担になるのではないか。それは、新たなインフレ圧力になるだろう。一方、米国への輸入で関税を支払う場合、最終製品価格の高騰は避けられない。つまり、トランプ大統領の政策はインフレ圧力を高めることが想定される。FRBは、まずは物価の抑制に注力すると見られ、2025年末から2026年前半に掛け、利上げが検討される可能性もあるのではないか。2025年末までのFFレートは、4%前後である可能性がさらに高まったと考えられる。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。