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- S&P500指数にみる「原子力ルネサンス」
S&P500指数構成銘柄の年初来の株価騰落率ランキングにおいて、原子力発電株が上位を占める異変が起こっている。生成AIブームによる電力需要の急増を受けて、いま米国では「原子力ルネサンス」が沸き起こっており、原子力発電大手のビストラ・コープ株はエヌビディア株よりも圧倒的な株価パフォーマンスを示す。
年初来の株価騰落率ランキングの上位に原子力発電株が並ぶ
S&P500指数構成銘柄の年初来(2023年12月末-2024年9月末)の株価騰落率ランキングにおいて、生成AI(人工知能)向けのGPU(画像処理装置)等を手掛けるエヌビディア株が2位に入った。この結果に特段の驚きはないが、特筆すべきはその前後に原子力発電株が並んだことだ。ビストラ・コープは年初来で+210%、コンステレーション・エナジーは+124%と、突出した株価パフォーマンスを示している(図表1)。
ビストラ・コープはテキサス州に本社を構える発電会社で、原子力発電が同社の発電容量全体に占める割合は16%(6.4GW)であり、発電容量では全米2位だ。一方、コンステレーション・エナジーは2022年2月に米電力会社大手エクセロンからスピンオフされた発電会社で、米メリーランド州に本社がある。原子力発電が同社の発電容量全体に占める割合は67%(22.1GW)で、発電容量では全米最大となっている(図表2)。なぜ原子力発電株がこれほどまで急騰したのか?その理由は生成AIブームに伴う電力需要の増大だ。
ChatGPTの電力消費量はGoogle検索の約10倍
IEA(国際エネルギー機関)の調査によれば、ChatGPTの電力消費量はGoogle検索の約10倍にもなる。このため、ChatGPTのような生成AIが急速に普及することになれば、今後数年で莫大な電力需要が発生することになる。
IEAの予測では、データセンター、AI、暗号資産のグローバル電力需要は、2022年時点の460テラワット時から2026年には最大で1,050テラワット時まで急増するシナリオが示されており、この増加分はドイツの年間電力消費量に相当する(図表3)。
CO2排出量の少ない原子力発電が再び見直される
生成AIブームに対応するため、データセンターへの投資を加速させているのがハイパースケーラーと呼ばれるハイテク企業大手だ。アマゾン・ドットコム、アルファベット、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズの4社は、ここ数年で設備投資額を大幅に増額させており、その大半がデータセンターへの投資と見られている(図表4)。
これらのデータセンターが稼働すれば大量の電力が消費されることになるが、その際の発電源として有望視されているのは、CO2排出量の少ないクリーン・エネルギーだ。なぜなら、上記4社は2030年までにクリーン・エネルギーに100%コミットしているからだ。このため、再生可能エネルギーよりも稼働率が高い原子力発電に現在注目が集まっている。
原子力発電はCO2の排出量が少ないうえ、休止中の発電施設も多く存在する。9月20日にはコンステレーション・エナジーがスリーマイル島の原子力発電所を再稼働させ、マイクロソフトのデータセンター向けに20年間電力を供給する契約を発表したばかりだ。国際原子力機関(IAEA)の最大シナリオでは、2050年にかけて北米の原子力発電の設備容量が現在の約2倍に相当する228GWまで増加すると予測されているが、2030年時点では微増に過ぎない(図表5)。
原子力発電の供給力は簡単には増やせないため、既存の原子力発電事業者に電力契約が殺到している。原子力発電株の高騰は、このようなファンダメンタルズの急変と投資家の期待を反映したものだと言える。
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