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- 「トランプ大統領」への心構え
11月5日に投票日を迎える米国大統領選挙は、世論調査を見る限り、カマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領が大接戦となっている。9月10日の候補者討論会以降も両候補の差がつかなかったことで、「トランプ大統領」の可能性にも準備が必要になった。政策面で際立つのは金融政策への考え方、そして基礎的関税だ。いずれもインフレ圧力を強め、ドル安の要因と言えよう。
■ 勝者はすんなり決まらないだろう
米国大統領選挙は投票日まであと3週間を切った。ABC系のニュースサイト、『ファイブサーティエイト』の集計によれば、10月15日現在、全米における支持率はハリス副大統領が48.5%、トランプ前大統領が46.1%、歴史的な僅差になっている。特に勝敗を決すると見られる激戦7州では、両候補の差がほとんどない状態だ(図表1)。
2020年の前回大統領選挙では、投票日まで3週間前の時点における世論調査において、ジョー・バイデン大統領がトランプ前大統領に対し全米で10.5%ポイントのリードを維持していた(図表2)。また、激戦でも同大統領が軒並み優位になっていたのである。しかしながら、実際の得票率を見ると、バイデン大統領のリードは全米で4.4%ポイントに過ぎず、ノースカロライナはトランプ前大統領が1.3%ポイント差で勝利した。
2016年の大統領選挙もそうだったように、トランプ前大統領の支持率は世論調査だと低目になる傾向がある。9月10日の候補者討論会では、ハリス副大統領のパフォーマンスを評価する声が多く、直後に歌手のテーラー・スイフト氏が支持を表明、同副大統領が抜け出しても不思議ではなかった。しかしながら、トランプ前大統領も根強い支持を得ており、その後も混戦が続いている。
この大統領選挙、投票日直後に勝敗が決まる可能性は極めて低い。激戦州における票の数え直しなどを考えれば、当選者の確定には相当な時間を要すると想定される。
■ 「トランプ大統領」なら為替は・・・
大統領選の公約を見ると、民主党が中低所得者対策など「大きな政府」的政策を列記し、共和党は減税・規制緩和など「小さな政府」をアピールするものになっている。何れも党の伝統に従った内容だが、共和党陣営はトランプ前大統領の意向を反映し、1)金融政策へのホワイトハウスの関与、2)基礎的関税の導入・・・の2つを盛り込んだ。
米国においては、FRBの理事は大統領が指名、上院の承認を必要とする。さらに、「雇用の最大化」と「物価の安定」のデュアルマンデートは、連邦議会による1977年の法改正の結果だ。ただし、日々の金融政策に関しては、FRBが独立して責任を負っている。仮に大統領が関与することになれば、制度設計が大きく変化することを意味しよう。
また、トランプ政権時代、米国の関税率は加重平均で1.4%から3.0%へと上昇した。仮に基礎的関税が全輸入品に導入された場合、ピーターソン国際経済研究所は、2025年の消費者物価が4.1~6.9%ポイント、2026年は4.1~7.4%ポイント押し上げられるとの試算を示している。
円・ドル相場は、日米の実質短期金利差に連動する傾向が強い(図表4)。金融政策への大統領の関与、そして基礎的関税の導入は、いずれも米国のインフレ圧力を強める政策だ。足下、日米の物価上昇率は概ね同水準であり、結果として日米実質金利差は名目金利差とほぼ同じだった。従って、FRBの利上げによりドル高・円安が進んだ。しかし、仮に米国の物価上昇率が高まれば、日米の実質短期金利差は縮小する可能性が強い。それは、ファンダメンタルズから見て円高要因だ。
「ハリス大統領」であれば、バイデン政権と政策は大きな違いがなく、円安傾向が続くと見られる。一方、「トランプ大統領」の場合、円高のシナリオがあり得るのではないか。今回の大統領選挙の結果は、マーケットにも大きな影響を与えるだろう。
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