Article Title
南アの総選挙は重要なイベント
梅澤 利文
2019/02/19

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

南アランドは18年全般の下落傾向から、米国の金融引締めペース減速などを受け上昇に転じています。ただ、足元電力供給への不安からランド安となるなど不安定な面も見られます(図表1参照)。ランドの今後の展開を見る上で総選挙の位置づけは重要で、その試金石が19-20年度予算案と見られます。



Article Body Text

南アフリカ総選挙:党首選で選出されたラマポーザ大統領、総選挙で地盤を固めるか?

南アフリカのラマポーザ大統領は2019年2月7日の施政方針演説で、総選挙(大統領/議会、議員投票で大統領選出)を19年5月8日に実施すると表明しました。18年2月に党首選で就任したラマポーザ氏は汚職疑惑で退陣したズマ氏の残りの任期(19年5月)を引き継いでいました。

与党アフリカ民族会議(ANC)の国民議会(下院に相当、定数400)での現有議席は249で、報道などから次期総選挙での過半数確保は可能性が高いと見られています。ただ、与党内にズマ氏を支持する勢力もおり、仮に議席数が大幅減となれば、政権が不安定となることも懸念されます。

 

 

どこに注目すべきか:総選挙、予算案、エスコム、格付け

南アランドは18年全般の下落傾向から、米国の金融引締めペース減速などを受け上昇に転じています。ただ、足元電力供給への不安からランド安となるなど不安定な面も見られます(図表1参照)。ランドの今後の展開を見る上で総選挙の位置づけは重要で、その試金石が19-20年度予算案と見られます。

予算案は2月20日に議会に提出される予定です。予算案の内容を見る上で注目されるポイントは総選挙を前に財政拡大が懸念される中、規律を維持できるかという点です。

南アフリカのGDP(国内総生産)成長率は過去数年は前年同期比で1%前後の低水準で推移しています(図表2参照)。総選挙が無いとしても、財政拡大を求めたくなる経済環境です。

予算案における注目の一つが経営危機に直面する非上場の国営電力会社エスコムへの対応です。エスコムは南アの電力供給の大半をカバーしていますが、電力供給は不安定で、南ア経済成長のネックとなっていました。ラマポーザ大統領はエスコムを発電、送電、小売りの3社に分割し持ち株会社の傘下に置く再編構想を述べると共に、19-20年度予算案に同社のテコ入れ策を含めると表明しています。仮に債務を一気に引き受ける大判振る舞いとなれば、南アの財政は一気に悪化し、格下げも懸念されます。

しかし、市場予想では、支援は同社のパフォーマンス改善度合いに応じて行うなど、財政への影響に配慮した仕組みが導入されると見られ、当初からの大規模な資本注入は控えると見られています。

なお、南アの格付けを主な格付け会社で確認すると投資適格としているのはムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)のみで、S&Pグローバル・レーティングとフィッチ・レーティングスは南アの長期国債格付けを非投資適格級としています。ムーディーズの格付レビューは3月29日に控えているため、2月20日に公表される19-20年度予算案において、課税による歳入強化や歳出抑制といった姿勢が示されないと、格付けへ、その結果ランドへの影響も懸念されます。

ラマポーザ大統領は先の施政方針演説で白人が大半を所有する土地の無償収用の黒人への再配分を目指し、必要な憲法改正を進める意向を示すなど市場が期待する構造改革への意欲を示しています。ランドの動向を占う上で選挙対策と財政のバランスが要注目のポイントと見ています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


円安に見る、日銀ゼロ金利政策解除は単に出発点

中銀ウィーク、FRB以外に見られた注目点とは

3月のFOMC、年内3回利下げ見通しを何とか維持

ECB、政策金利の運営枠組み見直しを発表

2月の米CPI、インフレ再加速の証拠は乏しいが

2月の米雇用統計は波乱材料とならず