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経済学のキホン② ~経済とは?②~
2024/01/25

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概要

コロナショック後、特に耳にする機会が増えたインフレやデフレについて、財政政策や金融政策も交えて理解しておくことが重要です。




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■重要な経済用語② 「インフレ」、「デフレ」

前回に続き今回も、よく見聞きする経済用語をご紹介します。まず「インフレ」についてです。インフレという言葉はここ数年、特によく耳にする言葉ですが、インフレーションの略で、物価水準の持続的な上昇を意味します。インフレ状態にあるか否かについては、物価水準の変化率を示す代表的な指標の1つであるCPI(消費者物価指数)で確認することができます。CPIは毎月公表され、前月比と前年同月比で物価の変化率が示されます。前月比は足元の物価変動を示し、物価のモメンタム(勢い)が確認できます。一方で、季節的な要因による物価変動も含んでしまいます。前年同月比は、同じ月同士の比較となり、季節的な物価変動の要因を考慮する必要がなく、1年間の物価の変化を見るのに便利です。日本においては、すべての品目を含む総合CPI、生鮮食品を除いたコアCPI、生鮮食品およびエネルギーを除いたコアコアCPIが毎月公表されており、2022年、2023年と2年連続で総合CPIが2%(前年比)を上回ることが予想されています(2023年12月末現在)。


インフレには要因の違いによって2つの種類が存在するといわれており、1つは需要側の要因によるディマンドプル・インフレ(図表1)、もう1つは供給側の要因によるコストプッシュ・インフレです(図表2)。前者は、需要が供給を上回る状況をうけ、供給サイドである生産者がモノやサービスの価格を引き上げることで生じる物価上昇を指します。一般的に、好景気時の高い需要が売上高増加につながり、それに伴う賃金上昇がさらなる需要を喚起するといった好循環が生まれやすい状況だといえます。一方、後者は原材料費や人件費等の高騰によって増加したコストを生産者がモノやサービスの価格に転嫁することで生じる物価上昇を指します。供給コスト増加による価格上昇は、消費者の消費意欲を削ぐなどして需要を減退させ、生産者の収益を圧迫します。また、消費者の消費意欲の低下を避けるため、仮に価格転嫁を先送りしたとしても、コスト上昇は着実に生産者の利益率を悪化させ、最終的には価格転嫁が避けられない状況になることが予想されます。ちなみに2020年年初から発生したコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻に起因し発生したインフレはまさに典型的なコストプッシュ・インフレに該当するといえます。


図表1:ディマンドプル・インフレ


※上記はイメージです。

図表2:コストプッシュ・インフレ


※上記はイメージです。

次に、「デフレ」についてです。デフレとはデフレーションの略で、インフレとは逆に、物価水準が持続的に下落することを指します。一般的に、需要が供給を下回ることでデフレ状態が発生するため、景気悪化時に陥りやすいといえます。景気が悪ければ、消費意欲が減退し、モノやサービスの売れ行きが落ち込み、生産者は価格を引き下げざるを得ないからです。一方、技術革新等により、生産効率が大幅に改善する場合には、低コスト化による市場への大量供給や価格引き下げが期待できます。しかし、実際にはそれに見合う需要がなければ、生産者の収益を圧迫することになります。いずれにしても、デフレ状態が長く続くことは、生産者の収益の悪化とそれに伴う賃金や雇用の減少を招くため、決して経済にとってプラスだとはいえません。また、このようにデフレによって発生した賃金や雇用の減少がさらに需要を減退させ、景気の悪化を招くという悪循環のことを「デフレスパイラル」といいます(図表3)。文字通り、デフレと景気の悪化の循環から抜け出せないことを意味します。


図表3:デフレスパイラル


※上記はイメージです。

また、インフレやデフレにより、モノやサービスの価格が変動すると、当然それらの価値を決める物差しであるお金の(通貨)価値も変動します。インフレの場合には通貨価値が下がり、デフレの場合には通貨価値は上がります。インフレ環境下において運用の必要性が叫ばれるのは、通貨価値が下がり、資産価値の実質的な目減りが生じるからです。さらに、過度なインフレやデフレは通貨価値の安定性を毀損し、通貨としての信認低下につながります。通貨としての信認低下は国内外における様々な経済活動において多くの弊害を生みます。よって、通貨価値の安定化を図るためにも、物価の安定を図ることが重要であり、それには景気そのものを安定させる必要があります。


■重要な経済用語③ 「財政政策」、「金融政策」

景気や物価の安定化を図るために行われるのが「財政政策」と「金融政策」です。いずれもアクセル(景気刺激策)とブレーキ(景気抑制策)があり、その調節を行うことで最終的に景気や物価の安定化を目指します。日本を例にご説明します。「財政政策」は、日本政府が財政(歳入や歳出)を通じて行う経済政策注1の1つで、具体的には公共事業の拡大・縮小や減税・増税等が該当します(図表4)。たとえば、景気を刺激したい場合、公共事業を拡大し、減税を行う等、積極的な財政出動を伴う政策を行います。これにより、新たな雇用が生まれ、所得の増加と共に消費が拡大し、それに伴い企業の業績が好転し、世の中の景気が良くなることが期待されます。ただし、このような政策は、財源が確保できない場合には国債等を発行して実行することになります。そのため、副作用としてインフレ率の過度な上昇、国の財政悪化等が懸念されます。一方、「金融政策」は日本銀行が政策金利やマネタリーベース注2を調整することで物価の安定化と経済の健全な発展を図る経済政策の1つです(図表5)。たとえば、景気を刺激したい場合、政策金利を引き下げ、国債の買いオペレーション等を通じてマネタリーベースを拡大します。これにより、世の中の金利が低下し、個人の消費や住宅購入、企業の設備投資が増え、景気が良くなることが期待されます。これを金融緩和といいます。ただし、行き過ぎた緩和は過度なインフレや資産バブル、通貨安につながるため、適切なコントロールが重要になります。

注1:財政政策や金融政策の総称で、特に左記2つはマクロ経済政策といわれる。注2:日本銀行が世の中に直接的に供給するお金のこと。

図表4:財政政策



※上記はイメージです。

図表5:金融政策



注1:長短金利操作のこと。短期金利を政策金利で、長期金利を国債のオペレーションで意図的に操作する。
注2:金融市場調節の手段の1つで、主に金融機関を相手に行う資金の貸付けや国債等の売買により、金融市場における資金の供給と吸収を行うことを意味する。
※上記はイメージです。

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