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経済学のキホン⑧ ~経済思想史⑤~
2024/04/18

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概要



ケインズによる修正資本主義について、どのような理論に基づき政府による経済への介入が支持されたのか理解することが重要です。



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■ 乗数効果と消費性向

政府による積極的な経済への介入が生み出す「乗数効果」についてご説明いたします(図表1)。乗数効果とは投資の増加が経済全体に連鎖的に拡大していき、結果として所得や消費の増加量が投資の増加量の何倍にもなるという考え方です注1。たとえば、公共投資を行った場合、もちろんそれ自体が経済を刺激することにもつながりますが、それだけではなく公共投資から生まれる新たな雇用等が所得や消費の増加を生み出し、国全体の付加価値を増加させることにつながります。このとき、付加価値の増加額は単に公共投資額にイコールになるのではなく、何倍にもなるため、政府が借金をしてでも経済に介入したほうがよいといえます(図表1、2)。


さらに、図表1で示している通り、乗数効果が大きくなるかを決める重要な要素に「消費性向」があります。消費性向は所得のうち、どれだけ消費に回すのかを示すものです。この数字が大きくなるほど、乗数効果は大きくなります。さらにケインズは人々が消費以外に投資にもお金を回す割合を増やすために、公共投資といった政府の財政出動に加え、市中金利を下げる金融政策も必要だと説きました。銀行に預けても利息がつかないのあれば、事業への投資にお金が回り、それはさらなる有効需要を生みます。この金融政策については次のページでご説明いたします。

注1:投資が産業全体もしくは特定の産業に与える波及効果(生産誘発効果)とは異なる点に注意が必要です。

図表1:消費性向と乗数効果



図表2:乗数効果の例


■流動性選好説


人々が得た所得を消費や投資ではなく、貯蓄に回し、かつ現金で保有するとき、それは現金以外で保有する(証券等)際のリターンが低い、もしくは現金という高い流動性を維持することへの需要が大きい状況にあるといえます。人々は証券等で得られるリターンが少ないのであれば、それらを犠牲にしても高い流動性の方を選好し、現金で保有する傾向にあるという考え方を「流動性選好説」といいます。よってケインズはこの説に基づき、人々が所得を消費や投資に回すために、現金で持つことのメリットを小さくし、投資に回すメリットを大きくすべく、財政政策と金融政策の併用を唱えました。貯蓄に回すことで得られるリターンを利子率、事業等への投資で得られるリターンを利潤率(資本の限界効率)とし、不景気の際には利子率を下げ、利潤率が相対的に上がる政策をとることで市場のお金の流れを活性化させ、有効需要を増大させるというものです。これは現代の金融政策にも影響を与える理論となっています。


図表3:ケインズの経済政策

                                                                            







                                                               



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