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分散投資実践編⑤ ~分散投資の効果2~
2023/06/09

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概要

POINT
●長期投資を実践するためには、ポートフォリオの大きなドローダウンの発生確率を抑制することが重要であり、そのためには効果的な分散投資が欠かせません。


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■  ポートフォリオへ金を組入れる効果


今回はポートフォリオの一部に金を組入れた場合の効果についてご説明します。まず金の値動きは先進国株式と同程度の大きさであり、相対的にリスクの高い資産です。しかし、金と主要資産の相関係数は相対的に低く、株式や国債などの伝統的な資産とは異なる値動きをする傾向があることが分かります(図表1)。したがって、株式や債券のポートフォリオに金を組合わせると高い分散効果が期待できます。これは単体で見ると値動きが大きかったとしても、値動きの相関が低い資産同士を組合わせれば、互いに値動きを打ち消しあい、結果的に値動きを抑える効果が期待できる事例の1つです。


次に、ポートフォリオの最大下落率(ドローダウン)についてご説明いたします。長期投資を実践するために重要なことの1つに、ポートフォリオのドローダウンをなるべく抑えるというものがあります。長期投資を行っていると、時折生じるマーケットの大きな下落は避けられないものです。その際、単一の資産に集中投資を行っていた場合、資産価値は大きく目減りし、含み損に耐え切れず損切りをしてしまう可能性があります。また損切りをしなかったとしても、その後資産価値が下落前の水準に回復するまでに長い時間を要してしまう可能性があります。このように長期投資を続けるためには、ポートフォリオのドローダウンをなるべく抑えた運用を行うことが欠かせないと言えます。ではその効果を実際のポートフォリオの例で見てみましょう。



図表1: 金 スポット価格 と代表的な資産の相関係数
月次、米ドルベース、期間:1998 年 12 月末~ 2023 年 5 月末



※米国株式: MSCI 米国株価指数、 世界株式: MSCI 全世界株価指数、 先進国株式: MSCI 世界株価指数 、 新興国株式: MSCI 新興国株価指数、米国リート: MSCI 米国 REIT 指数、米国国債: FTSE 米国債指数、世界国債: FTSE 世界国債指数、新興国国債: JP モルガン EMBI グローバル・ディバーシファイド指数、金スポット価格:金 米ドル、出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

■  金を組入れたポートフォリオのドローダウン


米国株式に100%投資したポートフォリオと米国株式に35%、米国国債に35%、金に30%投資したポートフォリオのドローダウンを比較したいと思います。なお、計測期間は1998年12月30日から2023年5月31日で、米ドルベースの日次データを使用し、ドローダウンは上記期間中の最高値から最安値までの下落率を示しています(図表2)。この期間中、主要金融資産が最も大きく下落したマーケットイベントは2008年のリーマンショックでした。リーマンショック前の高値からリーマンショック後の安値を見てみると、米国株式は2009年3月9日に-55.4%を記録しました。このとき米国株式だけを保有していた場合のドローダウンはもちろん-55.4%です。


一方、金を含めた上記のポートフォリオのドローダウンは2008年11月20日につけた-21.8%です。ちなみに2009年3月9日時点では-17.6%となっており、徐々にパフォーマンスが回復しつつあったことが分かります。このように、米国株式や米国国債、金等の値動きの異なる様々なに資産を組合わせたポートフォリオは、単一の資産に集中投資するよりも大きなドローダウンの発生確率を抑えることが期待でき、より長期投資に適した投資アプローチであると考えられます。



図表2: 米国株式と米国国債、金 スポット価格 を組合わせたポートフォリオのドローダウンの推移
日次、米ドルベース、期間:1998 年 12 月 30 日~ 2023 年 5 月 31 日



※米国株式: MSCI 米国株価指数、米国国債: FTSE 米国債指数、金スポット価格:金 米ドル、出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成


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