Article Title
分散投資実践編 ⑦ ~大幅下落局面でも投資を継続する重要性~
2023/07/06

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

概要

下落と上昇のサイクルが存在する金融市場では、 分散投資ポートフォリオや時間分散を活用し 、たとえ大幅な下落局面に遭遇しても投資を続けることが重要です 。

Article Body Text

■大幅な下落局面で取るべき投資行動


今回は、大幅な下落局面に遭遇した際に取るべき投資行動についてご説明いたします。これまで、投資を行う上でリスク(値動き)を抑えるためには相関が低い資産を組合せることが重要であるとご説明してきました。これは分散投資を考える上で基礎的な考え方であり、通常は効果が期待できます。しかしながら、リーマン・ショックのように金融市場に大きな混乱が発生した際には、幅広い資産の価格が揃って下落する結果となり、一時的な資産間の相関の高まりにより分散効果が薄れてしまう傾向にあります。そのため、分散投資を行っていても常に資産全体の値動きを抑えて安定的なリターンを生み出せるとは限りません。一方、金融市場にはサイクルがあるといわれているように、資産価格が永遠に上昇し続けることも、下がり続けることもないといえます。実際に過去の相場をみると、たとえ大幅な下落局面に見舞われ幅広い資産が下落したとしても、金融市場が落ち着きを取り戻すとともに資産価格が戻り、一時的に高まった資産間の相関も再び元の水準に戻ってきたことがわかります。具体的に見ていきましょう。


図表1のチャートは2004年12月24日以降の米国株式と米国国債の値動きと主要資産の52週前比プラスリターン比率を表しています。52週前比プラスリターン比率は、図表1の右の表に記載されている主要資産のうち、52週前(1年前)と比べてプラスのリターンが出ているものの比率を示します。ピンク色で網掛けした部分は、52週前比で値上がりした資産の比率が20%以下であった期間を示しており、幅広い資産が下落した時期といえます。この期間に起こった代表的なイベントは2008年のリーマン・ショックや2022年以降の世界的なインフレとそれに対応した急速な金融引き締めです。これらのイベントが示しているように、大きな金融危機や急激な金融環境の変化が生じると、多くの投資家が保有している資産を投げ売るという行動を起こします。その結果、幅広い資産で一時的に相関が高まるという現象が起こり、分散投資を行っていてもその効果が十分に得られない状況に陥ります。しかし、時間が経つにつれ、徐々に資産価格は回復し、同時に資産間の相関も復活することで、本来の分散効果が得られるようになるわけです。





図表1 :米国株式および米国国債の価格推移と主要アセットクラスの 52 週前比プラスリターン比率
週次、 期間: 2004 年 12 月 24 日~ 2023 年 6 月 16 日 、 米ドルベース 、 米国株式および米国国債は 2004 年 12 月 24 日= 100 として指数化
ピンクの網掛け部分は主要アセットクラスの 52 週前比プラスリターン比率が 20 を下回った期間



このような下落局面ですぐに資産を売却してしまうと、その後の相場の戻りを取り損ねる可能性があるため、ある程度我慢してリスクを取り続けることも重要です。一方、相場が戻るタイミングなどを正しく見極め、投資行動に移すことは非常に困難です。そのため、一括投資を行うのではなく何度かに分けて投資を行う時間分散や積立投資などを活用し、よりリスクの分散を図ることも重要であると考えます。

※主要アセットクラスの 52 週前比プラスリターン比率は 、 以下のアセットクラスの米ドルベースの 52 週前比リターンがプラスとなったものの比率
※世界国債: FTSE 世界国債指数 、 米国国債: FTSE 米国債指数 、 日本国債: FTSE 日本国債指数 米ドル換算 、 ユーロ国債: JP モルガン GBI ユーロ国債指数 米ドルベース 、 新興国国債 米ドル建て JP モルガン EMBI グローバル ・ ディバーシファイド指数 、 新興国国債 現地通貨建て JP モルガン GBI EMグローバル ・ ディバーシファイド ・ コンポジット指数 、 米国投資適格社債: FTSE 米国投資適格社債指数 、 米国ハイイールド債券: FTSE 米国ハイイールド債券指数 、 米国モーゲージ証券: FTSE 米国モーゲージ証券指数 、 新興国社債: JP モルガン CEMBI ブロード ・ ディバーシファイド指数 、 先進国株式: MSCI 世界株価指数 、 米国株式: MSCI 米国株価指数 、 日本株式: TOPIX 米ドル換算 、 欧州株式: MSCI 欧州先進国株価指数 米ドルベース 、 新興国株式: MSCI 新興国株価指数 、 米国グロース株式:ナスダック総合指数 、 世界公益株式: MSCI 世界公益株価指数 、 世界リート: S&P グローバル REIT 指数 、 日本リート:S&P 日本 REIT 指数 米ドル換算 、 商品: S&P GSCI 商品指数 、 ユーロ 米ドル 、 豪ドル 米ドル 、 金スポット価格:金 米ドル
※為替および金スポット価格を除きトータル ・ リターン ・ ベース
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ ・ジャパン作成


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら

MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。



関連記事


日付 タイトル タグ
日付
2023/03/30
タイトル 分散投資実践編① ~長期資産運用の手段としての分散投資~ タグ
日付
2023/04/18
タイトル 分散投資実践編② ~主要な資産の値動きと金利の関係~ タグ
日付
2023/05/11
タイトル 分散投資実践編③ ~効率的な資産の組み合わせ~ タグ
日付
2023/05/25
タイトル 分散投資実践編④ ~分散投資の効果~ タグ
日付
2023/06/09
タイトル 分散投資実践編⑤ ~分散投資の効果2~ タグ
日付
2023/06/22
タイトル 分散投資実践編⑥ ~日本の投資家のためのアセット・アロケーション~ タグ
日付
2023/07/19
タイトル 分散投資実践編 ⑧ ~長期投資の実現を妨げる行動ファイナンス上のバイアス~ タグ
日付
2023/08/04
タイトル 分散投資実践編 ⑨ ~金融政策が与える金融市場への影響~ タグ
日付
2023/08/17
タイトル 分散投資実践編 ⑩ ~長期積立・分散投資の効果~ タグ
日付
2023/08/30
タイトル 分散投資実践編 ⑪ ~アセット・アロケーション・ファンドの優位点~ タグ

ESG投資や新興国投資について学びたい方へ

コラム

もっと詳しく学びたい方へ

図解で学ぶ投資のトピック

投資の基礎を学びたい方へ

投資を始める前に知っておきたいこと