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日本銀行と金融政策⑤ ~日本銀行の金融政策の変遷②~
2024/11/28

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概要


金利自由化に伴い、日本銀行はオペレーションを通じて無担保コールレートや市中に流通する通貨量を調整し、金融緩和や金融引締め政策を行うようになりました。


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■オペレーション(公開市場操作)と無担保コールレート

今回は日本銀行の金融政策について、金利自由化が完了した1995年以降から2006年あたりまでの変遷をご説明いたします。前回、日本銀行が戦後長らく公定歩合を政策金利として扱い、その調整によって金融政策を行ってきたとご説明しました。1994年、金利が完全自由化を果たすと、短期注1の市場金利を誘導するオペレーション(公開市場操作)を通じて金融緩和や金融引締めを行うようになりました。オペレーションとは日本銀行が金融市場で流通する資金量を調節するための手段であり、主に資金を「供給」する目的でのオペレーションと「吸収」する目的でのオペレーションがあります。供給オペレーションについては、CP(コマーシャルペーパー)や国庫短期証券、国債、有価証券等を金融市場で購入したり(買いオペ)、日銀が市中の金融機関から金融資産を借入れ、それを担保に資金を貸し付けることで行います(レポ取引)。吸収オペレーションについては、日本銀行が保有する手形や国庫短期証券の売却(売りオペ)や、日銀が買い戻しを条件に市中金融機関に対して国債や国庫短期証券を売却することで行います(リバースレポ取引)。そして、公定歩合の代わりに政策金利として扱われはじめたのが「無担保コールレート(オーバーナイト物)」注2でした(図表1)。

1997年に改正、1998年4月に施行された日本銀行法に合わせ、日本銀行ではこうした金融政策の運営について討議、決定する会合を「金融政策決定会合」として、定例開催および議事要旨・議事録を公表することを決めました。そして1998年以降の会合において、その議事要旨・議事録に金融市場調節の操作目標として無担保コールレートをどのように誘導するかを記載するようになりました。2001年2月に行われた金融政策決定会合まではこの無担保コールレートを平均的に何%程度で推移するように促していくのかが記載されてましたが、同年3月以降に「量的緩和」を実施開始したことをうけ、操作目標は無担保コールレートから「日本銀行当座預金残高」に変更されました。

注1:1年以内の貸し借り
注2:コール市場(金融機関が日々の短期的な資金の過不足を調整するための取引を行う市場)において、無担保で行われる資金貸借かつ約定日の翌営業日が返済期日となる取引にかかる金利                                                                                  

図表1:無担保コールレート(オーバーナイト物)の推移
(月次、期間:1985年7月~2006年12月、月平均値を使用)


出所:日本銀行のデータを基にピクテ・ジャパン作成

■量的緩和と日本銀行当座預金残高

2001年3月に行われた金融政策決定会合で、日本銀行はそれまで続けてきたゼロ金利政策が経済の成長回復に寄与していないことや海外経済の急減速等をうけ、より一層の緩和が必要と判断しました。そして、デフレから脱却するまで(CPIの前年比上昇率が安定的に0%以上となるまで)長期国債の購入等を通じて資金を供給し、金融市場調節の操作目標を金利ではなく、民間の金融機関が保有する日本銀行当座預金口座の残高に設定することを決めました(図表2)。目的や期待された効果としては、長期金利の引下げやリスクもリターンも生まない口座の残高が増加することで民間の金融機関の資産運用に変化(例えば、貸出の増加等)が起きること等があげられました。2006年3月の金融政策決定会合をもって、量的緩和が解除されると金融市場調整の操作目標は再び無担保コールレート(オーバーナイト物)となりました。  

図表2:マネタリーベース平均残高、マネタリーベース平均残高(前年同月比)の推移
(月次、期間:1985年7月~2006年12月)


マネタリーベース:日本銀行が世の中に直接的に供給するお金を意味し、流通現金(日本銀行券発行高+貨幣流通高)と日本銀行当座預金の合計値
出所:日本銀行のデータを基にピクテ・ジャパン作成

                                                         



           



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