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- 戻り歩調を強める株式市場、選別的に株式の組入れを引き上げ
経済活動再開への期待が膨らむ中、株式市場は前月に続き戻り歩調となりました。こうした中、当ファンドでは選別的に景気敏感な銘柄への投資を拡大するなどして株式の組入れ比率を引き上げています。一方で、ディフェンシブ性の高い銘柄や長期的な利益成長が望める銘柄も多く保有することでリスク・バランスの取れた運用を行っていく方針です。
5月の投資環境と 運用状況
世界の株式市場は、月半ばにかけては新型コロナウイル スの感染拡大を受けた都市封鎖からの経済活動再開の 動きなどがプラス要因となった一方で、米中関係の悪化 が懸念されたことに加え、米新規失業保険申請件数や ユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)など一部経済指標 が景気悪化傾向を示したこと、新型コロナウイルスの感染 拡大第2波への警戒などがマイナス要因となり、変動しな がらも下落しました。月後半は経済活動再開の動きに加 え、新型コロナウイルスのワクチン開発についての期待が 高まったこと、主要国の景気刺激策などを背景に月末に かけて上昇基調となり、月間でも上昇しました。
世界国債 市場はプラス、マイナス要因が混在する中、小幅な下落 (利回りは上昇)となりました。新型コロナウイルスの感染 抑制に向けた封鎖政策の緩和、全般的な株式市場の回 復、原油価格が上昇傾向であったことなどが世界国債市 場のマイナス要因となる一方で、一部経済指標は依然悪 化傾向であること、米中関係に対する懸念、欧州中央銀 行(ECB)や米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和 政策への期待が根強いことは世界国債市場のプラス要 因でした。
ドル・円為替市場は、米国の封鎖政策が徐々に解除の 方向に向かう一方で日本の非常事態宣言の全面解除が 月末近くまで延長されたこと、米国経済の先行指標が改 善傾向を示したことなどを受け、円安・ドル高が進行しまし た。ユーロ・円為替市場は、ドイツ経済の期待指数が大幅 に改善したこと、独仏が復興基金の創設で合意したこと、 欧州中央銀行(ECB)のパンデミック緊急購入プログラム の債券購入制限が緩和されるとの期待などから、大幅な 円安・ユーロ高に転じました。
当ファンドの基準価額動向をみると足元では、2020年3月23日を底に株式市場が反発してたことを受けて、回復基調にあります。
主な投資行動:株式の組入れを引き上げ
株式の組入れを引き上げ、債券やキャッシュの組入れを削減しました(図表4参照)。
株式部分では、5G関連や電子決済関連の個別銘柄バスケットの買い増しをおこなった他(図表5の①)、建設・資材や自動車・部品の欧州株式先物(同➁)、世界プレミアム・ブランド株式(同③)などの景気敏感とされる銘柄に投資しました。その他、追加的な財政政策が期待されることなどから日本株式先物の買戻しなども行いました(同④)。
債券部分では、米国長期国債先物や米国中期国債先物などを売却し(同➄)、ポートフォリオのデュレーションを短期化しました。一方で、米国投資適格社債やグローバル転換社債型新株予約権付社債を購入しました(同⑥)。その他、割安なメキシコ中期国債を組入れるなどしました(同➆)。
オルタナティブ部分では、輸送アセットリースを全売却するなどしました(同⑧)。
基準価額の変動要因: 株式市場の上昇が大きくプラス寄与
このような環境下、株式が基準価額に大きくプラスに寄与した他、債券もプラスの寄与となりました。株式部分では、米国株式先物などの北米株式や世界プレミアム・ブランド株式などの世界株式の寄与が相対的に大きくなりました(図表5の➈)。
債券部分では、先進国国債の寄与はマイナスだったものの(同➉)、株式の上昇局面で値上がりしやすいグローバル転換社債型新株予約権付社債などを含む社債がしっかり(同⑪)で、債券全体としてはプラス寄与となりました。
株式:売られ過ぎのセクターに注目
世界経済は最悪期を脱しきれていませんが、一方、株式市場の短期的な先行きは若干改善したと考え、市場の急落時に特に大きく売られた複数の景気敏感セクターの組入れを引き上げることとしました。
鉱業や化学等、素材セクターはとりわけ魅力が増していると考えます。中国では経済活動指数(「デイリー・アクティビティ・トラッカー」)が既に1月の水準を回復していることから、当セクターは、今後展開される景気回復の恩恵に浴することが期待されます(図表6参照)。
更に重要なことには、過去の例では、素材株の上昇に資する傾向が認められるマネーの拡大が散見されることです。当セクターは、バリュエーション面でも魅力が増していると考えられます。
もっとも、景気敏感セクターが全て魅力的だというわけではありません。金融セクターは、景気敏感セクターであり、かつ、割安感が強いことは間違いありませんが、割安株(バリュー株)の上昇相場は、今後数ヵ月、期待できそうにありません。債券利回りが低水準に張り付く環境下、融資の貸倒引当金が増える状況は強い逆風となることを意味します。
地域別では、ピクテのモデルで最も割安な市場の一つである日本市場の先行きが改善しています。中国と同様、日本では、海外旅行の不振が国内消費の拡大に寄与したものと思われます。海外での消費が自宅での買い物に替わったからです。また、内閣も追加の景気刺激策として、1.1兆ドル相当の事業規模の経済対策を承認しており、安倍首相は、これが実行に移されれば、景気支援策の総額はGDPの40%強に相当すると述べています。また、月中には、新規の感染者が激減したことから非常事態宣言が解除されています。
一方、英国はバリュエーション面での魅力は残るものの、FTSE100株価指数は、近い将来、強い反発を見込み難いエネルギー銘柄の組入比率が高いこと、また、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る交渉が山場を迎えており、株式市場が動揺する可能性も考えられることなどから、やや慎重な見方をしています。
上述の通り、景気循環に沿って資産配分の小幅の調整を行いましたが、リスクは概ね均衡しているとの見方は変わりません。リスクの均衡は、スイス株(先物)やヘルスケア株等、ディフェンシブ性の高い株式の組入れを維持することで図っています。
債券:紙幣の増刷進む
世界の中央銀行は、新型コロナウイルスの打撃を受けた経済の回復に向けて、GDPの13%に相当する7.5兆ドルを供給する史上最大の大型景気対策を講じています(図表7参照)。こうした行動が債券市場の全てのサブ・セクターを大きく押し上げていますが、市場の一部には割高感が際立つことから、投資家にはこれまで以上の識別力が求められます。
ピクテでは米国市場の選好を続けており、中でも国債ならびに投資適格債に注目しています。
米連邦準備制度理事会(FRB)は世界の中銀の中で最も積極的な対策を講じており、量的緩和策には社債の買入が含まれています。 政策金利がゼロ・パーセントを下回る公算は極めて低いと思われますが、今後数ヵ月のうちに、インフレ率が目標を大きく下回った場合には、日銀の政策に似たイールドカーブ・コントロールが導入される可能性があると考えます。
FRBによる今年の流動性供給総額は2.4兆ドルを上回り、年末までに4兆ドルを超えることが予想される財政赤字の60%程度が賄われると考えます (図表8参照)。 こうした状況により、非伝統的金融緩和の効果を考慮した、実質ベースの米国の「影の政策金利」は、足元の -3.3%から年末までに過去最低水準の-4.7%を更新すると思われます。
現地通貨建て新興国債券は引き続き魅力的だと考えます。新興国の予想インフレ率が過去最低の2.5%に留まっているため、韓国、ロシア、トルコ等にはもう一段の利下げ余地が残されています。
ユーロ圏債券については、中央銀行の景気対策に支えられているとはいえ、多くの市場は利回りがマイナス圏に沈んでおり、魅力に欠けます。前述の通り、独仏両国が主導する復興基金の創設は先行きを期待させますが、イタリア、スペイン、ポルトガル国債の(ドイツ国債に対する)超過利回り(イールドスプレッド)は既に大きく縮小しており、一段の上昇相場は限られます。
金のオーバーウェイトも変わりません。また、足元の上昇相場をもってしても上値余地があると考えます。米中間の緊張が再び強まる状況では魅力的なヘッジ手段となるからです。世界の中銀各行による積極的な金融緩和は、長期的に見て通貨価値の下落リスクを強めることとなり、このことも貴金属のサポート要因です。
今後の 運用方針
新型コロナウイルス感染拡大の第2波などもダウンサイドリスクとして警戒されていることから、依然として予断を許さない状況が継続しています。しかし、経済活動再開に向けた動きが徐々に活発になる中、一部の経済指標は改善傾向を示しており、世界経済には底打ちの兆しが見え始めています。また、追加的な経済対策への期待も高まっており、相場の下支え要因として注目しています。
流動性環境は、公的部門と民間部門を併せた信用拡大のモメンタムはピークに近づいているという見方もありますが、引き続き高い水準の流動性が供給されており、良好な環境であると考えています。
センチメントについては、マーケットの季節性はややネガティブですが、年初から投資資金がMMFなどの短期金融商品に流入していることから、こうした投資資金がリスク資産へ還流することも期待され、総じては中立的であるとみています。また、バリュエーションに目を向けると、株式市場は資本コストの低下などを織り込む格好で大きく上昇し、割安感が後退しましたが、依然中立的な水準であると考えています。
こうした中、株式部分では経済活動再開の恩恵を受けやすい景気敏感な銘柄について、選別的な投資を行っていく方針です。また、引き続き不透明感の強い相場環境が継続することが予想される為、ディフェンシブ性の高い銘柄や長期的な成長テーマを有する銘柄も併せて保有することで全体のリスク量を調整します。
債券では、引き続き投資適格社債を選好していきます。
また、金は高い分散効果が期待されることなどから引き続き保有を継続します。
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